速読英単語入門編を徹底レビュー・必修編との被りや長文の特徴などを検証してみた

どーも！がこないのクボタです。

今回もリクエストコメントにお答えする単語検証動画シリーズの、ブログ記事バージョンになります。特に動画上では、単語リストの表示は部分的になっておりますので、全リストをゆっくり文字で見たい方はこちらを参照してください。

今回は速読英単語の入門編のレビュー記事になります。

今回は初めて取り上げることもあり、まずはこの本の中身をじっくりと吟味するために、特に上位版である速読英単語の必修編との違いを検証していきたいと思います。

以前の記事で速読英単語・必修編のレビューは詳しく触れています。先にそちらをご覧になりたい方はこちら。

速読英単語必修編レビュー→上級編と繋げるメリットをプログラミングの検証から説明する【ターゲット】【システム英単語】【LEAP】

速読英単語をやるなら必修編→上級編と進むべき理由を、プログラミングの観点から主張。単語帳自体のレビューも掘り下げました。

もちろんプログラミングの配列比較や、共通テストのカバー率などは調べます。受験でこのシリーズを使おうか迷っている方も是非参考にしてください。

今回やりたいこと

今回やりたいことを1枚の図で表したので、まずはこちらをご覧ください。

箇条書きに書いてあるとおりで、今回は主に入門編と必修編の比較に重点を置きます(客観的に見るための補足として、他社の単語帳は取り上げます)。

速読英単語入門編の概要

速読英単語・入門編の概要はこんな感じ。

かなりの歴史がある老舗シリーズですが、最新版としては入門編は、改訂第3版が2020年に刊行されています。ちなみに必修版は改訂第7版が2019年に刊行されており、どちらも共通テストのタイミングで大きく刷新してきた印象です。

大学受験用の速読英単語は、レベルとして下から順に入門編、必修編、上級編(今回は割愛)となっており、見出し語番号付きの総単語数は入門編が1450、必修編が1945、上級編が901となっています。

出版は大学受験業界の大手であるZ会、大学受験以外のコンセプトで作られた速読英単語シリーズも多数用意されており、単語帳の中ではかなりの知名度を誇ります。

このシリーズのコンセプトはあまりに有名ですが、表紙カバー裏に集約されているので引用します。

あまりに有名なシリーズなので、一言で言えば

の元祖(?)、知名度で言えばナンバーワンの単語帳です。この形式自体に対する意見は今回は割愛して、早速中身にいきましょう。

速読英単語・入門編のレイアウト

まずは以前の記事で紹介した、上位版2冊のレイアウトをおさらいしましょう。

速読英単語・必修編のレイアウトはこんな感じ。

速読英単語・上級編のレイアウトはこんな感じ。

どちらも左右に見出し語が並ぶタイプ。

特に上級編は、色使いの単調さや番号がつく単語が縦に並んでいない(横の関連後に番号が付く場合あり)ために、視点移動が不規則になりがちであまり好きではありません。

必修編で少なくとも番号付きの見出し語は縦に並ぶようになったので、視点移動の不満はなくなりました。色使いも最低限の気遣いが感じられます。

それに対して速読英単語・入門編のレイアウトはこんな感じ。

はい、個人的にはかなり見やすくなった印象。

必修編と同じく関連語や同義語、反義語、品詞違いの派生語も同じように載っています。

その中で必修編との違いは

つまりターゲット型です。私が個人的に好きなレイアウトですね。

さらに大きな違いは

という点でしょう。

入門編は元々こうだったのかもしれませんが、私にとっては必修編や上級編のレイアウトが速読英単語とばかり思っていたので、この「1単語・1例文スタイル」はかなりの驚きです。

従来の文章型単語帳に対する不満点として、よく挙げられるのが単語ごとの例文の欠如。この点を入門編は完全にカバーしていることになります。

必修編の1945単語よりも数を減らした分、1単語あたりに割り当てられるスペースが増える、1450単語という数だからできたとも言えますね。

つまりまとめると、速読英単語シリーズのレイアウトは

ということになります。当然私も、入門編のレイアウトが1番好きですね。

その単語のちょっとした使い方を確認したい時(どんな文脈で使えるのか、主語は何がきているのかなど)、その単語ごとの例文をチェックするのは大切なことです。

その他の小さな違いとして

という点にも注目します。

つまり見出し語の下についてくる関連語や同義語、反義語、品詞違いの派生語は縦に並んでいますが、それら全ての訳が赤字で書かれています。

大したことではないと感じる人もいるでしょうが、ほとんどの単語帳において、見出し語以外の単語は黒字のままです。つまり赤シートチェックなどでも当然隠すことはできません。

それでも全て完璧に覚えようとする人は問題ありませんが、この黒字扱いが無意識のうちに

という制約となりかねません。

もちろん１週目で覚える必要はありませんが、この本を何週もしたくなった時に、この仕様はやりがいがあるとは思いませんか？

ちなみに他の単語帳で、このような派生語を完全に赤字扱いしているものは鉄壁が有名でしょう。私はこの仕様が好きですね。

速読英単語といえば長文部分ですが、後ほどこの部分を必修編・入門編と比較しますので、先に単語比較を進めていきます。

速読英単語の入門編と必修編で被り検証

今回レビューする入門編は、高校生向けの速読英単語では一番下のレベルに相当します。まさに高校1年生が手に取るような入門編ですね。

仮にこのシリーズが自分にバッチリ合うと感じた人は、そのまま必修編に進みたいと思うはず。

2冊の単語帳で被った単語が多ければ、乗り換えた時の負担は軽くなります(その分語彙数は増えない)。

一方で被った単語があまりに少なければ、乗り換えた時の負担は大きくなります(その分語彙数は増える)。

つまり同じ出版社縛りで単語帳を乗り換える場合も、このブログで毎回行っているプログラミングの配列比較が有効です。

2冊の被りは普通これくらい

そもそも同じ出版社の下位版と上位版の単語帳って、どれくらい被っているものなんでしょう？

基準を知っておかないと被りが多いのか少ないのか判断できないので、ダイジェスト的に見てもらいます。

まずはターゲット1900と1400の被りはこんな感じ。

差分は引き算すれば出るので割愛します。

次にシステム英単語とベーシック版の被りはこんな感じ。

そしてLEAPとベーシック版の被りはこんな感じ。

最後にオプティマ2000と1600の被りはこんな感じ。

やはり出版社によってばらつきがありますが、最低でも(上位版の)半分は被っているとも言えますね。

私の個人的な感覚からも、これくらいが乗り換えた時の負荷としては最適解なんでしょう。あまりに被りが少ないと途中で挫折してしまいますからね。

ではこれらの数を覚えておいてください。いいですね？

速読英単語・入門編と必修編の被り

それでは早速速読英単語・入門編と必修編の比較に入ります。

今回使用する言語はPython、自然言語処理ライブラリとしてSpacyになります。詳しいプログラミングのコード部分は割愛します。

共通項だけ示すので、差分は引き算しておいてください。

結果はこちら。

はい、938単語。

やはり必修編の1945単語から見ればおよそ50パーセント被っていることになります。

つまり入門編の見出し単語を全て覚えれば、必修版に移ったとしても2つに1つは知っている状態なので、極端にページが進まないということはないでしょう。

動画では時間の関係上、全ての単語を紹介することはできませんが、ブログは別です。文字の利点を生かして、共通する単語の全リストを見ていただきましょう。縦に長くなるので、見たい方だけ見られるようにするため、袋とじにしておきます。訳は自分で調べてください。

他社下位版との被り

速読英単語・入門編はあくまでも下位バージョンの立ち位置です。そこで各出版社の単語帳における、下位バージョンとの被りをダイジェスト的に見てもらいましょう。

まずは速読英単語・入門編とターゲット1400の被りはこんな感じ。

ターゲットにはさらに下のターゲット1200があります。速読英単語・入門編とターゲット1200の被りはこんな感じ。

同じような数値でも、おそらく簡単な単語は1200と被り、標準レベルの単語は1400と被るなどの違いはあると予想されます。

次に速読英単語・入門編とシステム英単語ベーシック版の被りはこんな感じ。

次に速読英単語・入門編とLEAPベーシック版の被りはこんな感じ。

最後に速読英単語・入門編とオプティマ1600の被りはこんな感じ。

どれもびっくりするぐらい似たような結果になりました。乗り換えなどを検討している方は参考にしてみてください。

下位バージョンは総単語数が1400前後のものが多いと考えれば、かなりの割合であることが分かりますね。

共通テストにおけるカバー率

次に速読英単語・入門編における共通テスト2022のカバー率を見ていきましょう。

自然言語処理の手順に興味のある方は、こちらの記事を参照してください。

その他の3冊は、やはり立ち位置として似ている下位バージョン3冊を用意しました。結果はこんな感じ。

やはり下位バージョンは基礎単語が多いので、的中する割合も高くなる傾向にありますが、その中でも速読英単語・入門編の的中率は群を抜いています。

ターゲット1400の的中単語リスト

システム英単語ベーシック版の的中単語リスト

オプティマ1600の的中単語リスト

速読英単語・入門編の的中単語リスト

基礎単語を除きたい

今回は下位バージョン同士におけるレベル差も見ておきたいので、毎度のことながら中学レベルの単語を省いてみます。

結果はこんな感じ。

残った単語数としては若干少ない気がします。ちなみにターゲット1200だとおよそ60個くらいと明らかに数が減ります。

よって誤差の範囲内かもしれませんが、収録単語のレベルとしてはターゲット1400より少し易し目、ターゲット1200よリは上のレベルと予想できます。

おまけとして、速読英単語・必修編を含めた上位版における的中率はこんな感じ。

基礎単語が除かれた後の数は、やはり大きくなる傾向にありますね。

カバー具合は長文中でこう見える

いつもカバー率ばかり話題にしていますが、それで実際に読めると断言できるわけではありません。文法的な知識や、長文読解力、さらには背景知識や国語力などが総合的に絡んでくるからです。ただし、知らない単語が少なければ少ないほど、それらの力と合わせて読み進める可能性は広がります。

例えばここに共通テスト2022の長文の某１ページを引用しました。文量的に一番多く見えるページで、問題を解くつもりはありませんので悪しからず。

ここで上位版である速読英単語・必修編の的中単語に色をつけると、このように長文は見えてきます。

実は必修編でも十分優秀なカバー率です。かなりの面積を占めていますね。

次に速読英単語・入門編の的中単語に色をつけるとこんな感じ。

より基礎レベルの単語が多いので、面積が増えること自体は珍しくありません。

注目すべきは、必修編→入門編で色が消えてしまった単語がほとんどないことですね。つまり、必修編で当てている単語はほぼ入門編でも等しく当てていることになります。

以上の点から、速読英単語・入門編は表紙が謳っている通り、共通テストでも十分戦えることが分かりました。

入門編を派生語まで覚えた場合

ではおまけとして、速読英単語・入門編を派生語(今回は関連語、同義語、反義語、品詞違いの語をまとめて呼称)まで覚えた場合、どれほど必修編に肉薄するのか見ていきましょう。

入門編はこれらの語も全て赤シートチェックができるので、検証する意義はあるはず。

先程の入門編と必修編の被り具合をもう一度ご覧ください。

なお、入門編の派生語は全部で992単語あります。よって総単語数は2442、この状態で必修編の1945単語との被りを見るとこうなります。

450以上増加したことになります。私としてはかなり増えた印象で、派生語まで覚える見返りとしてはかなり大きいと感じます。

ここまで極めてしまえば、むしろ必修編を飛ばして上級編、もしくは他社単語帳に進むのも有効かも。

入門編と必修編の長文部分を深掘り

最後に速読英単語を手にとる最大の理由は、

という動機からだと思います。

今回はほんのおまけ程度に、2冊に掲載されているテーマごとの長文を大雑把に比較していきます。

毎度のことながら、先にまとめた箇条書きをご覧ください。

さらに2冊から長文の一部を見比べてください。中身の黒塗りは著作権対策だと思ってください。

まず入門編はこんな感じ。

続いて必修編はこんな感じ。

当然語数も難易度も、必修編の方が上です。さらに必修編においては、センター試験や各大学の2次試験から文章を引っ張ってきているので、そのまま受験対策にもなるのが最大のメリットと言えます。

しかし今回は入門編が主役の記事ということで、あえて入門編の長文の方が英語力向上に向いているケースを提示していきます。

入門編の長文のメリット1

これからはあくまでも初級者向け、英語が苦手な人向けに話しますが、ご自身の英語学習の環境に置き換えれば色々応用が効くポイントを何点か紹介します。

まず最大のメリットは

これにつきます。これは高校標準から見たレベルなので、人によってはこの本の文章ですら難しいと感じる人もいるでしょう。そのような人はさらに易しいレベル(中学校の教科書など)と置き換えてください。

感覚的には自分の文法力、思考力を最大限に駆使しないと読めないレベルから、1段階下げたレベルだと考えれば分かりやすいかも。

そのような易しい長文で行えるトレーニングの例をあげれば、

などなどいくらでも出てきます。

今回これらのやり方や効果については割愛しますが、どれもコツコツ続ければ確実に英語力がアップする定番の学習法です。

しかし多くの生徒がこれらのトレーニングを半ば諦めてしまうのも現実で、そのような生徒に共通しているのが

という点です。今回の例で言えば、いきなり必修編で上記のトレーニングをするのは、偏差値60以上などの上級者でなければ続かないでしょう。

結論として、私の感覚では入門編の長文レベルこそが、平均的な高校生には向いていると感じます。

入門編の長文のメリット2

次のメリットとして私が注目するのは

という点です。

次の画像をご覧ください。

実は入門編は、一続きの長い長文を(1)〜(8)のように分けて掲載していることが多く、必修編では(1)〜(2)までで終わるものしかありません。

1ページあたりでは語数100前後の入門編ですが、(8)まで続けば800語、これは大学受験で言えば超長文の域です。

易しいレベルが長く続いているだけと思うかもしれませんが、私はこの超長文を利用することで、

に使えると考えます。リテンションとは記憶の保持のこと。

共通テストのリスニング、特に最後の大問あたりで、リスニング自体は聞こえるのに長すぎて解けない人はいませんか？

多くの場合、その理由は次から次へと流れてくる英語に気を取られて、前の情報を忘れてしまうからなんです。

まあ結局は全体を把握する力や、情報の優劣をつける力(日本語では当たり前にしていること)など必要になってくるのですが、私はこれらの対策には易しくて長い英文が一番向いていると考えます。

長い文章を聞いたときに、要するにこういうことなんだと後から説明できるかどうか意識しながら、全体の流れをイメージして聴く練習に使いましょう。

補足として、当然ですが長文が(1)〜(8)など、ページで分かれていますので、必ず音声をダウンロードして通し再生しましょう。

ちなみにQRコードで聴けるストリーミング再生を試したところ、(1)は(1)のページのみ、つまり通し再生ができないのでやめた方がよさそうです。

私の場合は音声ファイルダウンロード後、Appleの標準ミュージックアプリにプレイリストを作って通し再生しています。

まとめ

今回の検証は以上です。まとめはこんな感じ。

箇条書きの通りです。

個人的な感想で言えば

って感じですね。

単語レベルは見出し語だけでも共通テストには対応できるし、派生語まで覚えればある程度の2次試験にも戦えそうです。

さらに先程あげたようなリスニング対策や、英文を前から訳し下る(速読とは言いたくない)トレーニングに本書の長文が最適と考えれば、非常にコストパフォーマンスに優れた1冊と言えるでしょう。

もちろん長文(2次レベル)の純粋な読解には別の問題集を使うべきだし、熟語も別で覚えた方が良いでしょう。

1冊で全ての要求を満たす単語帳なんて存在しないので当たり前ですが、速読英単語・入門編は受験生だけでなく、大人から学び直した英語学習者にも汎用性のある1冊として非常におすすめです。

最後に単語検証企画において本末転倒な言い方になりますが、大学受験の英語は単語帳を覚えるだけで合格できるような甘いものではありません。繰り返しにはなりますが、たとえこのレベルだと特に、文法の知識や長文読解力、読むスピード、論理的思考、背景知識、国語力、、、さまざまな能力の組み合わせで高得点が取れるように作られています。

単語だけに逃げず、バランスの良い学習を心がけてください。

今回の記事の動画バージョンはこちら。

はっきりとモチベーションに繋がるので、よかったら高評価やチャンネル登録してね。

それでは今回はここまで！